過去掲載分【2015年】

 

2015/11/19 獲得した判決の紹介とコメント

<介護サービス費の不正取得を糾す>

1 当事務所は、介護保険に関する業務も取り扱っており、市町村などの保険者、事業者側いずれにも関与しています(両者は地域を異にします。)。この介護保険制度、2000年に施行されて以降急速に拡大し、対象者が約564万人、介護費用の予算が9兆円を超えています。予算が増えれば、これを不正に取得する事業者(数は少ないですが)が出てくることは想定しておかなければならないことです。

2 先日、当事務所が保険者側として獲得した判決がありました(新聞2紙で報道されました)。
事案ですが、保険者が、ある事業者に対して、介護サービス費の不正取得分の返還を求めたところ、その事業者は運営会社を解散し、その処分取り消しを求め、保険者を被告として裁判所に提訴したものです。
争点は多岐に渡りました。
ざっくりまとめると、手続面では、原則として返還命令と同時にその理由を示さなければならないのですが(行政手続法14条)、保険者がその要請を充たしたといえるかが争点でした。実体面では、当該事業者の一連の行為が、「偽りその他不正の行為」(介護保険法22条3項)に該当するかが争点でした。

3 詳細は省きますが、証拠の認定方法の違いから当該処分の一部は取り消されたものの、上記の各争点では保険者側の主張を認めた判決を得ました。つまり、当該事業者の不正取得が認められました。その意味で正当な判決です。

4 高齢化の進展により介護保険制度の予算、対象者は急増しこれに伴い不正請求も増えたことから、平成20年に介護保険法22条3項が改正され、地方税の滞納処分の例によって直接かつ強制的に徴収することが可能とされましたが、この点に関する公刊された裁判例は少ないといえます。本判決は、同規定の発生要件の充足が争われた事例であり、実務上参考になるものと思われます。また、行政手続法14条1項ただし書及び2項に関する裁判例は非常に乏しいことから、これらの適用を認めた裁判例としての意義も有するものと思われます。

5 これまでの経験に照らし、介護サービス費の不正取得を発見することは容易ではありません。個人的な感想ですが、全国各地で不正取得が少なからず発生していると思っています。残念なことは、このような事態から目を背けている保険者がいることです。税金や介護保険料が不正に取得されないように、また、この介護保険制度がこれからも健全に発展するように祈りながら、この戦いを続けていきます。(福島直也)

2015/9/22 購入書籍から

① ヘルスケア施設の法律と実務(ぎょうせい)
② 簡易算定表だけでは解決できない養育費・婚姻費用算定事例集(新日本法規)
③ 秘密保持・競業禁止・引抜きの法律相談(青林書院)
④ 遺産分割のための相続分算定方法(青林書院)
⑤ プロダクトデザイン保護法(日本加除出版)
⑥ 信用保証協会の保証(きんざい)
⑦ 元労働基準監督官からみた安全配慮義務(新日本法規)
⑧ 16-2版道路交通法解説(東京法令)☆
⑨ 民法(債権関係)改正法案の概要

①は、医療施設、介護施設、シニア向け住宅に関する制度、運営上の問題点を解説。
特にシニア向け住宅に関する解説が比較的充実しています。
⑦は、労災補償給付と民事上の損害賠償の関係について言及(第4章)。
その点が有益です。
⑧はこの分野の定番。とても分厚くなりました。お勧め。
⑨は潮見教授の著書。簡明な叙述に徹していて、全体を眺めるのに最適です。
(福島直也)

 

2015/9/21 H27年さが相続後見研究会で感じたこと

トピックスに記載した研究会に関連して備忘録的に。

研究会は、新しい佐賀県司法書士会館で行いました。
2階建てですが非常にコンパクト。大きな会議室でも10人くらいの収容能力です。
翻って佐賀県弁護士会館は非常に立派です。120人も収容できる「大会議室」があります。
もっとも、これほどの会館の必要性については、今でも考えることがあります。
当時、対案を示して総会で反対意見(賃貸案)に賛成したのですが、
最終的には現在の会館案が可決されました。
賃貸案における貸主が自治体だったことから、
この賃貸案自体が「弁護士自治を揺るがす危険な発想」と非難されたことが懐かしいです(笑)。

現在、弁護士業界は、法テラスによる価格破壊、
不合理な合格者急増などで法律事務所の採算が急激に悪化し、
法曹希望者が激減しています。
そのような状況下でも、会館建設に係るローンの支払いは、
会館建設費として会員に転嫁され続けていきます。
もちろん現会館が非常に便利であることは間違いないのですが、
マイナス面も忘れてはいけないということですね。
このテーマに限らず、「弁護士会費」の使用使途については、
有用性の検証がすっぽり欠落しているように思います。
以前に上場会社の社外監査役を務めた経験などに照らすと、
弁護士会は、お金の使い方に本当に無頓着だなぁと感じることが多いです。
また、佐賀県弁護士会だけでなく日弁連に多数ある委員会の事業についても、
その有用性が定期的に検証されているのかどうか疑問です。
投入できる資源は限られていますから、
不要なものを無くしていかないと本当に必要なものに注力できないのではないかと。

強制加入団体の弁護士会で、
少なくとも会費に関する不満は、そう遠くないうちに表面化してしまうかもしれません。(福島直也)
 

2015/9/7 破産手続を利用した事業継続・再生シンポ

トピックスにも記載した研修の件です。
倒産法検討委員会委員長として、今回の企画、実施を自分で行いました。
テーマとしては中上級者向けということもあり、佐賀での開催不要との意見もありました。
しかし、佐賀のような地方だからこそ「価値がある事業であれば残してみる」という視点を持つ必要があります。
本研修の講師の選定に始まり、打ち合せなど、準備にはかなりの時間を要しました。
教科書に記載されている一般論の棒読みは簡単ですが、面白くないし、開催する必要がありません。
ですから、実際の事例をベースに、現場の臨場感が伝わるように心がけたつもりです。
それゆえ、初心者の方には理解しがたい部分もあったと思います。
とはいえ、誰にでもできる分野ではありません。
下手をすれば大怪我ですし。
興味をもてない弁護士は関わって欲しくないし、興味があれば自分で調べれば済むことです。
この研修の準備を通じて、講師の方々、全倒研理事の方々の鋭い指摘など、個人的には極めて大きな収穫がありました。
佐賀にきて10年、その集大成になりました。(福島直也)
 

2015/8/16 購入書籍

今月の購入書籍の一部です。
個人的感想ですが、日本加除出版株式会社の書籍は常に一定以上のレベルの内容となっておりなるべく購入するようにしています。
☆をつけた「現代法律実務の諸問題」は、旬の問題に関する研修内容がまとめられたものであり必読です。
「不祥事対応ベストプラクティス」(商事法務)
「新リストラと労働法」(日本加除出版)
「中小企業における株式管理の実務」(日本加除出版)
「平成26年度研修版現代法律実務の諸問題」(第一法規)☆
「交通事故物的損害の認定の実際」(青林書院)
「裁判例から学ぶインフォームド・コンセント」(民事法研究会)
(福島直也)

2015/7/29 購入書籍

今月の購入書籍の一部です。☆がお勧め。
「業界別事業再生辞典」(金融財政事情研究会)
「企業のためのマイナンバー実務」(ぎょうせい)
「事業譲渡・会社分割による事業再生」(中央経済社)
「事実認定体系契約各論編1」(第一法規)☆
「事実認定契約各論編2」(第一法規)☆
編著者の村田渉氏は司法研修所での民裁教官でした。
当時からすば抜けた意欲をもたれていましたがその後も精力的活動を続けられていますね。
(福島直也)
 

2015/6/25 経営セーフティ共済 

取引先事業者が倒産してしまった場合、売掛債権が回収不能となり、資金繰りが破綻する場合があります。
このような事態に備えて、必要な資金を迅速に無担保で借り入れることができる制度があります。
「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」
http://mail.mirasapo.jp/c/aRjlahbHr3x7r3ab
その他のメリットとして、毎月の掛金を、個人事業の場合は事業所得の必要経費、
法人の場合は損金に算入することができます。
一度、検討してみてはいかがでしょうか。
(福島直也)

 

2015/6/4 「倒産と事業存続」(神戸)研修への参加

5月30日に、兵庫県弁護士会館で行われた「倒産と事業存続」に関する研修に参加しました。
この研修は、全国倒産処理弁護士ネットワーク第3回近畿地区研修会として開催されたものです。
報告及びパネルディスカッション共に非常によく検討されていて大変有益でした。
関係者の皆様の入念な準備が伝わってくる研修会でした。

破産管財人をしていると、「もう少し工夫すれば事業の一部でも存続できたのではないか?」と思うときが稀にあります。
100%清算してしまうほうが労力は少ないのですが、何も残らないのでは、雇用も維持できません。
清算すべきものはそうすべきですが、申立代理人弁護士は、もう少し問題意識をもってよいように思います。
佐賀県弁護士会倒産法検討委員会では、9月4日(金)に、「事業存続」をテーマに据えた研修を行います。
興味を持ってもらいにくいテーマですが、有益なものにしていきます。(福島直也)
 

2015/5/13 死刑事件弁護セミナー

5月11日、12日と東京の弁護士会館で行われた第3回死刑事件弁護セミナー

に参加しました。

 

セミナーでは、講師である米国の弁護士らから、同国の複数の死刑事件弁護事例が紹介され、弁護士と精神衛生の専門家らが協同して弁護チームを作り、

被告人の弁護にあたることの有用性が説明されました。

 

日米の制度上の違いもあり、直ちにこのような手法を実践することは困難ですが、死刑

情状弁護についての米国での最新のアプローチを知ることが出来たのは大きな収穫でした。

 

(原口侑)

2015/4/30 購入書籍

4月の購入分の一部です。
「現代型契約と倒産法」(商事法務)
「判例から見た書証の証拠力」(新日本法規)☆
書証を類型別に整理しこれに沿って裁判例を分析した書籍。
書証の重みを実感できる良書。

「ケースで学ぶ社員の不祥事・トラブルの予防と対策」(日本経済新聞出版社)
「使用者責任の法理と実務-学説と判例の交錯-」(三協法規出版)
「介護トラブル相談必携」(民事法研究会)
(福島直)

2015/3/23 購入書籍

3月の購入から。
☆がオススメです。
これまで金融機関による債権放棄は、事実上、法人のみに限定されていました。
代表者個人の方は破産を選択せざるを得ないケースが多かったです。
☆をつけた書籍は経営者保証ガイドライン(GL)に関するものです。
この経営者保証GLは、これまでの手法と大きく異なり、代表者個人に対する債権放棄の途を開くものです。
「いよいよ始まった!」という印象を抱いています。
今後の活用が強く期待されます。(福島直也)

「民事訴訟における事案の解明」(日本加除出版)
「マンションオフィスビル賃貸借の法律相談」(青林書院)
「特定調停手続きの新運用の実務」(商事法務)☆
「変貌する有期労働契約法制と企業の実務対応」(日本法令)
「有期労働契約の雇用管理実務」(労働開発研究会)
「破産申立マニュアル(第2版)」(商事法務)
「事業譲渡の理論・実務と書式(第2版)」(民事法研究会)
「まるわかり給与計算の手続きと基本」(労務行政)

 

2015/2/9 「コモンズさが」始動しました

弁護士、税理士、司法書士、行政書士、FPで構成する専門家集団「コモンズさが」が始動しました。
当事務所からは、私(福島直也)が弁護士として参加しています。
取り扱い分野は幅広く、家族信託、遺産分割、相続、後見、不動産、労務、事業再生、年金、税務申告、保険、訴訟等です。
これらの分野で専門的知見を結集し、問題解決にあたります。
今後は、コモンズさがとして、出張セミナー、個別相談などを開催していきます。お気軽にお尋ねください。
先日は、ミサワホーム佐賀さん主催の家族信託講演会の個別相談会の依頼を受け、コモンズさがで対応致しました。
今後は、WEB等で情報発信していきますので、詳細はその中で説明していきます。
コモンズさがのメンバーは、以下のとおりです。


弁護士・・・福島直也(弁護士法人はやて法律事務所)
税理士・・・福井泰成(福井税務会計事務所)
司法書士・・・相原宏(司法書士法人アドヴァンスさが事務所)
行政書士・社会保険労務士・・・長尾隆弘(長尾綜合事務所)
FP・・・平野公直(株式会社エ・ラベル)

 

2015/2/2 セミナー・中小企業再生支援協議会のこれから 

成27年1月28日(水)にホテル日航福岡で開催された、セミナー「中小企業再生支援協議会のこれから!」(主催:中小企業再生支援全国本部)に参加しました。
個人的には、経営者保証ガイドラインの運用について興味をもって臨みました。
これまでの廃業は「破産だけが出口」という側面が強く、それを回避するため、ぎりぎりまで無理をして一気に破綻するケースが多かったように思います。
地方では「破産だけは避けたい」という意識が強いから、なおさらです。
この経営者保証ガイドラインは、破産と比較すれば、いわばソフトランディングともいえる出口を用意できます。
「出口」を整備することで、「入口」もスムーズになるわけですから、積極的な運用によって、事業承継が進まず廃業が増える現状に歯止めをかけられるかもしれません。
基調講演では、統括PMから、民事再生法の改正の話も出ていました。中小企業再生支援協議会に蓄積された膨大な事例を集積して立法事実を積み重ねれば、方法次第で現実的な目標になると思わせるものがありました。(福島直也)

 

2015/1/29 高齢者虐待事例検討会

佐賀県高齢者虐待対応専門職チームのメンバーとして、平成27年1月22日(木)14時から佐賀ほほえみ館で行われた、佐賀市の虐待対応事例検討会に参加してきました。
検討会では、各エリアからの事例報告が行われ、参加者でその問題点を検討しました。
高齢者虐待防止法の対象となる施設に病院が含まれていない点など、現行法の不都合を痛感させられるものもあり、大変有益な検討会となりました。(原口 侑)